財務諸表の読解
単に「売上が伸びている」「利益が増えている」と解説するのではなく、利益の質を検証します。
利益の質を検証する
「利益が増えている。しかし、現金は増えていない。この差分を説明できない分析は、企業分析ではなく、決算短信の朗読にすぎない。」
売上成長の源泉
- 売上成長は数量によるものか、価格転嫁によるものか。
- 為替によるものか、M&A によるものか。
- 一時的な要因によるものか、構造的な要因によるものか。
粗利率の改善
- 粗利率の改善は競争優位によるものか、一時的な商品構成によるものか。
- 原価低減は構造的なものか、一時的な原材料価格の低下によるものか。
営業利益の増加
- 営業利益の増加は本業によるものか、費用計上の先送りによるものか。
- 販売費及び一般管理費の増加は、将来の成長への投資か、非効率の表れか。
運転資本の分析
運転資本の増大は、将来のキャッシュフローを圧迫する要因となる。
売掛金
- 売掛金の増加が売上成長を上回っていないか。
- 回収期間(DSO)は延長していないか。
- 取引先の信用リスクは変化していないか。
棚卸資産
- 棚卸資産の増加が売上成長を上回っていないか。
- 回転率(Inventory Turnover)は低下していないか。
- 在庫評価損のリスクはないか。
買掛金
- 買掛金の増加は、支払い条件の変更によるものか。
- 仕入先との関係は健全か。
キャッシュフローの追跡
営業キャッシュフローは純利益に追随しているか。
営業 CF の質
- 営業 CF は営業利益を上回っているか。
- 減価償却費は適切に加算されているか。
- 運転資本の変動は適切か。
投資 CF
- 設備投資は成長に見合っているか。
- 設備投資の ROIC は WACC を上回っているか。
- M&A は一株価値を高めたか。
財務 CF
- 配当支払いは適切か。
- 自社株買いは割安な局面で実行されたか。
- 借入金の返済は計画的か。
ROIC と WACC
ROIC(投下資本利益率)が WACC(加重平均資本コスト)を上回っているか。
「ROIC が WACC を上回らない企業は、資本を毀損している。」
ROIC の計算
- NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本
- 投下資本 = 有利子負債 + 株主資本
WACC の計算
- (株主資本コスト × 株主資本比率)+(負債コスト × 負債比率 × (1-税率))
株式報酬の希薄化
株式報酬を含めた実質的な株主価値の希薄化はないか。
- 発行済株式数の推移
- ストックオプションの行使状況
- 転換社債の転換権
- 希薄化後 EPS の開示